1.正しい通学の仕方!? その1気紛れで、ちょっとばかし早く学校に行こうとしていた時だった。私の通う、この飛翔綾学園というのは、それなりに都市部にあるにも関わらず、自然が豊かな場所にある。 そのおかげで、この小高い丘に立つ校舎からは、いい眺めが楽しめるのだ。 そして、自然豊かな場所だけに、やたら植物が多く、嫌味ったらしいまでに、学園の周りは緑に囲まれている。 つまり、事実上、山の中にあるような学校なのだ。 で、そんな学校に通う私としては、自然というのはエラく有難迷惑なものだと思う・・・。 知り合いのオバサン連中とかは、異口同音で、 「あら、いいわねえ〜、自然な豊かな学校って、景色が楽しめるでしょう?」 なんぞと御気楽極楽にいう。が、冗談ではない。 確かに景色はいいかもしれない。でも、 だから、なんだというのだーっ!!? と、叫びたくもなる。 例えば、ここに辿り着くには、結構長い坂道を上がっていかなければならないわ、そのの坂道は木々、特に桜が多いものだから毛虫は落ちるわ・・・・・・。 春は特に毛虫が坂道にカナリ落ちていて、更に潰れた毛虫も結構いるのだ。まあ、それらの上に落ちた桜の花びらがうまい具合にのって隠して、イイ感じな時もあるが、大概は見たくもないドロっとした色彩となんだかいや〜な匂いを放っている。 一応生徒が掃除をするから多少は綺麗にはなっているけれど、あんまり気分のいいものではない。 下を見なきゃいいという意見もあるが、この毛虫をうっかり踏んでしまったときの感触といったら、やっぱりいや〜なものである。 したがって、それが嫌なら、結局は見たくもない、生きている毛虫、潰れた毛虫、半分ほど潰れてでも蠢いている毛虫・・・、種類・形状豊富な毛虫を気を付けながら避けなければならないのだ。 実際通ってみないと意外とわからないものである。 綺麗なものには毒があるということだ。まあ、自然は確かに美しい。だが、その美しさに隠れて意外に見えない恐ろしさがあるだ。しかも、当事者でないと、意外にわからないのだ。 厄介である・・・。 まあ、どうせ、そんなことをいっても、部外者にはその気持ちなんぞわかってもらえはしない。実際に目にした事がないものだから、イマイチ現実感がないわけだ。 それに、ついでにいうとオバサン達は自然のイメージに毒されている気もする。自然のいいところ(空気がキレイとか、景色がいいとか)とかしか見ていない。 しかも、そのイメージを崩すようなこと(毛虫がいっぱいとか、蛇が出てくるとか)は耳に入れても結局のところは受け入れないのだ。 高校生のいうリアルな自然よりも、自分の抱く幻想の自然を大事に思っているから、無意識の内に排除して聞かないのかもしれない。まあ、結局のところはど〜だか知らないけれど・・・。 しかし、それはど〜でもいいんだが、暑い。 桜がほとんど散ったとはいえ、一応春だというのに、この暑さはなんなのだろう? 樹々が多い茂っている、この坂道は木陰に多少なっているものの暑い。暑いものは暑い・・・。 木漏れ日でさえ、ギラギラの太陽が眩しく暑い。 オマケにこの坂道は意外に長い。 学問の道はナカナカに厳しいものだというが、この坂道を登りきるのも厳しいものだと思う。 勉強するまえから、暑さと鬱陶しさ満載の坂道で、学習意欲がものの見事に消えていく・・・。飛翔綾学園はこの坂によって生徒の学習意欲を失わせたいのか・・・? 私はぼ〜っとしながら、妙に真剣に考えてしまった。 とりあえず、自然な豊かなところで子供を教育したいというのが、この飛翔綾学園のコンセプトらしい。それで、山の中のこんな所に学校なんぞを建てたらしい。 どうやら、自然の中で教育するというのは効果があるものだと、この学園の創始者は考えたらしい。 で、学校が、こんなところにある御陰で、現在、体力のない私は勉強をする前から学習意欲がなくなっている。 自然の効果、万歳・・・である。 で、私は、自然の豊かなところでは、子供は真面目に勉強する・・・という迷信があるがそれは嘘だとつくづく思う。 それは絶対に嘘だと思う。 だいたい、どんなところの学校だって、勉強を真面目にやる奴はやるし、真面目にやらない奴はやらないのだ。 それに、そんな“自然の効果は勉強するのに良い”理論が成立するなら、さぞかし植木屋やら花屋は儲かる仕事となっていそうな気もするし、日本はもっと自然豊かな国な気がする。 更に、そんなに“自然がいい”とほざくなら、いっそのことアマゾンの奥地にでも学校を立てりゃあよかったのにとふと思う。 嫌でも自然が豊かで、ついでに命の有り難味もわかると思う。 まあ、そんな学校ができてもまず行かないだろう。 わざわざ、好きこのんで、サバイバルをする趣味はない。 う〜ん、“飛翔綾学園 アマゾン校”開校・・・? 私は暑さの中でぼ〜っとしながらバカバカしいことを考える。 アマゾンに飛翔綾学園ができたら、食堂では白身魚のフライの代わりにピラニアのフライでも出てくるのだろうか・・・。 しかし、シャレにならないぐらい暑い・・・。 暑いものだからなのか、なんだかさっきからしょ〜もないことを考えている気がする・・・。 せめて、この坂をバイクでがああああっと登り切ることができたら、さぞかし爽快だろう。風もなくムシムシとした暑さが本当に鬱陶しくて不愉快でイライラする。 しかし、この学園は基本的に“バイク通学禁止”である。それに、そもそも私は免許自体を持っていないので話にならないのだが。 う〜ん、でも免許取ろうかなあ・・・・・・。 が、免許取ってもバイクを買う金がない。 なんやかんやといってお小遣いは、いつのまにやら、特に本関係に消えてしまう身の上なのだ。 「しかし、ダルイ・・・・・・」 この学校は結構好きだが、この坂道は嫌いである。 暑いから、汗かくし、喉が渇くし、疲れる、歩くの面倒くさい、今日は更に荷物も重い・・・。と、 「神崎ちゃ〜〜〜んっ!!!」 私に声を掛けて来た奴がいた・・・・・・。 1.正しい通学の仕方!? その2に続く |