1.正しい通学の仕方!? その2「うわっ!!?」 途端に目の前に強い風が、 ばさささーーーっ!!!と来た。 そして、一瞬の涼しさが消えた時には、 「はあ〜い、おはよう♪」 となんとも明るい声の主を見て、私はちょっと脱力する。 「ふ、藤崎君・・・」 「見ての通り、みんなのアイドル、藤崎君だよ〜ん♪」 フザけたセリフをかまして、颯爽とヘルメットを脱いだのはクラスメイトの藤崎 慎吾である。朝っぱらから元気なのはいつものことだが、 「・・・・・・。バ、バイク通学かいっ!!?」 そうである。彼は平然とバイクに跨っているのだ。 「そうだけど?」 が、多少びっくりしている私を見て、彼は平然と答える。 「おいおい」 この学校、多少の例外はともかくとして、確か基本的にバイク通学は禁止である・・・。 ついでにいうなら、この時間帯はあまりに生徒は通っていないけど、流石に見られるとマズイのだ。 「・・・。バイク通学ってマズいんじゃない?」 私はとりあえず正論をいってみた。 「大丈夫だよ。ちゃんと今度は免許取ったし」 で、飄々と彼は答える。 「なるほど・・・って、ちょっとまて・・・。 今度はって何よっ、今度はってっ!!?」 私は思わずツッコミを入れる。 「まあまあ、気にしない、気にしない♪」 「おい〜っ!!?」 あまりにも彼が明るく堂々というので呆然とした。 おいおい、無免許運転しちゃってたのかい・・・? (※絶対に、無免許運転はやめましょう&いうまでもありませんが、きちんと交通規則は守りましょう) 「ぶぶっ!!」 でもって、彼は笑った。 なっなんだあっ!!? 「というか、そこまで真にうけんなよ…。びっくりしたぞ」 でもって、彼はややびっくりしたように私を見た。 どうやら、私の疑問は顔に思いっきり出ていたらしい。 「…。びっくりしたのはコッチの方だ…」 「俺が無免許運転するように見える?」 妙に楽しそうに彼はいう。 「こ〜からかわれると、しているのかと本気で思う…」 「してませんって…」 「本当?」 私は怪訝そうに彼を見る。 「俺が嘘いうように見える?」 すると、藤崎君は大真面目にいった。 ……………。 実は彼には悪いが、なんだかその真面目っぽさがわざとらしく見えて、逆に信じられないものがあった…。それだけでは断定はできないとは思うけど…。 「結構、疑わしいけど、一応は信じることにはするよ…」 仕方がないので、皮肉をやや入れて私はいう。 「じゃあ、そういうことで♪」 でもって、結局あまり藤崎君はその事に気を留めることもなく、 「流石に、いろいろマズイから、誕生日がきた時にわりと早目に免許は取ったんだよ、俺」 そういうと藤崎君は制服のポケットに手を突っ込むと免許を見せてくれた。 「・・・・・・。なんか、今までの会話って、根本的に間違えてないか・・・・・・?」 藤崎君はこ〜いうことをいうから、正直にいって疑わしいと思ってしまう。 「だから、免許取ったんだろうが〜〜〜」 「だ〜か〜ら〜」 私はえっらそうにいう彼をドツきたくなった。 「神崎ちゃんがいいたいのは、バイク通学しちゃだめだろうが〜って事でしょ?」 でもって、それを察したのか、そのままズバリ藤崎君はいう。 ・・・。なんだ、一応わかっているのか・・・。 「他にもやってる奴は結構いるけどな」 でもって、あくびれもせず彼は答える。 「あっそうなの?」 そういう私は思わず聞いてしまう。でも、他の人間がしているからといってOKという理論は成立しないということはわかっている。 「まあ、バレたらやっぱりマズイけどね」 が、それはともかく藤崎君はケロリとしていう。 「でも、やるんだ?」 私は少々呆れながらいう。 「楽だもの」 そして、藤崎君はドキッパリいう。おいおい・・・・・・。 「まあ、確かにそうだろうね。でも、せめて許可ぐらい取れよ・・・」 しかし、ある意味正論なので、思わず私は納得してしまった。 「おう、わかってる。でも、バイクは特に夏はいいぞ」 で、ふふんとして彼はいう。そりゃ確かにいいだろう。 私はとりあえず彼に聞く。 「でも、ヤッパリやばいんでしょ?」 そもそもバイク通学は多少の例外はともかく基本的に禁止されているのだ。禁止されている以上、やるとヤバイのは自明の理である。それに、 「バイクとか隠しておかなきゃならないだろうし・・・・・・」 こういう許可のない状態で、マサカ堂々と学園内にはおけないだろうとふと思う。 バイクを運転したことはなくてもこのぐらいは、いくらなんだって私にもわかる。 と、藤崎君はいう。 「あっ、それは大丈夫だ。先公の一部にも口止めさせてるし」 「・・・・・・。なるほど。・・・って、おいおいっ!!?」 「どうした?」 たっのしそうに彼はいう。 「実は凄い事いいませんでした?」 私は念のため(!?)一応聞いてみる。 「別に? 特に極々フツーのことしか俺はいっておらんぞ?」 で、藤崎君はにこやかに飄々としていった。 「先生に口止めって・・・・・・」 「ああ、それかあ。まあ、先公だって人間だ。弱味の一つや二つはあるだろう?」 「まあ、そりゃねえ」 人間、確かに弱味の1つや二つはあるものだ。 「それを俺が握って、下手な事はできないようにしただけだ」 「いったい、どんな弱みを握ったんだか・・・・・・」 というか、どこから、そんなものを仕入れてくるのだ? 純粋に疑問である。 「それは流石に秘密♪ でも、神崎ちゃんが考えているような物騒なことはしていないから、安心していいよ。まあ、男と男の約束というものだからな」 ぐふふっと藤崎君はたっのしそうににいった。 「なんだかなあ」 私はぼやく。いや、ぼやかずにはいられない・・・・・・。というか、一体何をコイツはやっているのだ?。で、 「秘密の慎吾君ですから♪」 ど〜いうわけか、彼は投げキッスをする真似をする。 「おいっ」 私の力が思い切り抜ける。毎度の事だが、彼の性格はイマイチよくわからない。しかし、秘密の慎吾君て・・・・・・。 「テクマクマヤコン、テクマクマヤコンってかあ〜っ!!?」 が、対抗して思わずいってしまう私も少々問題である。 自分で言うのもなんだが、“秘密のアッコちゃん”の変身呪文をいってど〜するのだ? 「おっ、神崎ちゃん、詳しいな?」 「ちなみに、解除の呪文は、ラミパスラミパス、ルルルルル」 って、おいおい、私・・・。何いっとるんだ・・・。 「な、なんてマニアックな・・・・・・」 こんどは藤崎君の方が脱力した。 っていうか、どうしてこういう流れになるんだ? 何ゆえ、朝っぱらから、こうもボケとツッコミを繰り広げるはめになるのだ? いつものことといえば、そうなのだがそう思わずにはいられない。 でもって、 「というか、原因は君だろうがあ〜〜〜っ」 が、ともかく私は思わず抗議する。もともと藤崎君がバイクに乗ってくる事態が、まず間違えているのだ。 「俺はただ、健全にバイク通学してるだけだ〜〜〜っ」 が、藤崎君も、同じようにいい返す。 「それがマズイんじゃないかあ〜〜〜っ!!!」 「まあ、そうなんだけどね」 で、彼はあっさり肯定した。 「おや、モノワカリがいいね」 「おいおい、・・・って、話は変わるが、神崎ちゃん?」 「ほいほい?」 唐突に神妙な真面目そうな顔(!?)をして彼はいう。 ん? どうしたんだ・・・? 「・・・・・・俺のバイク通学チクる?」 ・・・。今更、それをいうかい・・・。 でもって私は、真面目に答える。 「別に・・・? というか、そもそも、そんなものを恐れるなら私に声を掛ける自体が間違ってないか・・・・・・?」 「まあ、そうなんだけどね」 彼はキッパリという。 「って、おいおい」 なんというか、よくわからん奴である。 というか、そんなこと聞くぐらいだったら、初めから声なんぞかけるべきではない。そんな確認するほど気にしているのなら、彼がやっている行動は本末転倒というものである。 ったく、何を考えているんだ、こいつは〜っ!? と私はそう思うのだが、それはさておいて、 「まあ、別にいいやしないよ。私が得をするわけでもなく損をするわけでもないからね」 そんなことをいう。 「おっ、話がわかるね」 楽しそうに笑う藤崎君。で、私はいう。 「そんなんじゃないよ」 損得計算だけじゃなく、そもそも、わざわざチクるのが、面倒くさいのだ。なんで、そんなことしてやんなきゃいけないんだよ?とも思う。それに私は、所詮、自分に被害が来なきゃ、人が何しようがど〜でもいい・・・と思う人間である。 だから、藤崎君がバイク通学をしようがなんだろうが、本当のところ、だから何?と思ってあまり関心がないのだ。 「ふ〜ん?」 藤崎君はなんだか意味深長な笑いをした。 「そもそも学校の校則ってあんまり好きじゃないんだ」 で、更に私はいう。 「そのわりには守っているじゃん?」 彼は茶化すようにいう。 「そう見えるだけ」 「へえ?」 「たまたま、私の普通の状態が、学校の校則を守っているとイコールになっているだけ、当然のことながら、気合入れて命掛けて守っているわけじゃない。そこまで、校則に忠誠誓う気なんて毛頭ないからね」 私は極々あっさりといった。まあ、みんなも多かれ少なかれ似たようなものだろうと思う。 「意外に優等生じゃないんだな・・・?」 ちょっと驚いたように藤崎君はいう。 「・・・? ほどほどに優等生なだけだよ。優等生と問題児を兼業しているからね」 「優等生と問題児の兼業ねえ・・・・・・」 「!?」 よくわからんが、それを聞いて藤崎君はウケたようだった。 「でも、数学は苦手・・・・・・」 「って、神崎ちゃん、それ、あんまり関係ない」 藤崎君がツッコミを入れた。確かに彼のいうとおりである。 私の数学の成績なんぞ、この会話において特に意味はないのだ。 が、私は多少偉そうにしながらいう。 「それはそうなんだけどさ。思わずいいいたくなった」 と、彼は非情に爽やかにいった。 「大丈夫、俺なんか、この前の古典のテスト赤点ギリギリだったぞ」 でもって、あっさりと私の態度が崩れる。 「って、そんな爽やかにいわれても・・・」 それに、彼は確かに古典のテストは赤点ギリギリだが、数学では満点に近いテストを取ってたりする。ちょっと羨ましい・・・・・・。 「って、時間そろそろヤバイのでは・・・・・・? 生徒が多くなってくるよ・・・・・・」 と私は、さっき自分が通ってきた通学路の遠くを見て気付く。遠くにこの学校の制服の群れがチラチラと見えるのだ。 「・・・・・・。そうだな・・・・・・。う〜ん、じゃあ、神崎ちゃん後ろに乗るっ? ・・・て、バレたらマズイなあ」 ふと藤崎君は真面目に考える。 「ヤダよ、流石に・・・・・・」 というか、そもそも、二人のりは恥ずかしくて、できない気がする。(爆) 「じゃあ、俺のバイク通学黙ってくれるお礼に、その重そうな荷物を運んでやるってのはどう?」 「・・・・・・」 それは、実言うとかなり魅力的な話であった。 「私の荷物悪用しないよ〜に」 そうと決まれば、とっとと実行である。 「了解〜♪」 「まあ、ともかくヨロシク」 「気を付けて運ぶから、大丈夫だよ。じゃあ昇降口で待っているから、じゃ〜ね〜♪」 というと、私の荷物を軽々と担ぐ。 そして、彼はぼるるるる〜っ!!!とバイクの音も高らかに坂道を登って去っていった・・・・・・。 「どうでも、いいが、事故らんでくれよ〜」 というが、彼はいない。そんなわけで、私は手ブラで楽々と登校することになったのであった。 持つべきものはバイク通学の友である。 まあ、すれ違う生徒にはちょっと怪訝そうな目で見られてしまったのではあるのだが・・・・・・。 1.正しい通学の仕方!? その3に続く |